AIを利用した営業DX・ロールプレイング/提案書のアウトライン作成について

目次 

はじめに
1.AIを利用したロールプレイング/提案書のアウトライン作成で営業DXができる
1.1.AIを利用することで、営業DX・ロールプレイング/提案書のアウトライン作成を効率化することができる
1.2.AIによるアウトライン作成の具体的なメリット
2.AIを利用した営業DX・ロールプレイング/提案書のアウトライン作成の手順
2.1.AIを利用した提案書のアウトライン作成の手順
2.2.AIを利用した提案書のアウトライン作成に必要なデータの収集方法
3.AIを利用した営業DX・ロールプレイング/提案書のアウトライン作成での課題と対策
3.1.AIを利用する上での課題
3.2.AIを利用するための解決策
4.AIを利用した営業DX・ロールプレイング/提案書のアウトラインに利用できるツール
4.1.現時点で提案書のアウトライン作成に利用できるツールの紹介
4.2.実際にAIを活用してロールプレイング/アウトライン作成を行った事例
まとめ

はじめに

DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進は全社、全事業所で取り組みを進めていると思います。
当然、営業部門も例外ではありません。
AIを導入して生産性を上げる分野にはどのようなものがあるでしょうか。手間暇を取られても避けて通れないものは何でしょうか。
それは、提案書の作成です。その提案書を作る上で欠かせないのが、アウトラインを作ることです。
頑丈な骨格がなければ、立派な家は建ちません。どのような家を建てるかによって、柱の立て方や梁の渡し方が変わってきます。
また、その提案書を顧客に提案するまでのロールプレイングのシナリオも、営業活動のシミュレーションには必要です。
ここでは、アウトラインの作成を中心に紹介して、必要に応じてその先の提案のシナリオについて触れることにします。

1.AIを利用したロールプレイング/提案書のアウトライン作成で営業DXができる

AIを利用した営業DX・ロールプレイングにおいては、AIが顧客の反応や意見を自動生成することができます。営業担当者は、これらのAIが生成した反応や意見に基づいて提案書のアウトライン作成を効率的に行うことができます。

1.1.AIを利用することで、営業DX・ロールプレイング/提案書のアウトライン作成を効率化することができる

本格的な提案書を作る前に、まずアウトラインを作り、関係者とのコンセンサスを取ってから進める方が無難です。
例えば、コンピュータメーカーの営業が新製品の提案を販売店の担当者にする場合を考えてみましょう。
単純にBtoBでメーカーから販売店へのセールスの場合とBtoBtoCで、その販売店が更にリセールする場合では提案書も変わってきます。
この提案書をもとに、どのようにセールスをするかシミュレーションを実施します。

1.2.AIによるアウトライン作成の具体的なメリット

各種シミュレーションはAIの得意とする分野です。条件を変えて何度でもシミュレーションを繰り返すことができます。
BtoBの場合には1通りのアウトラインの作成で済みますが、BtoBtoCの場合にはC(再販売先)の業種や種類によって相当数のアウトラインの準備が必要になります。

2.AIを利用した営業DX・ロールプレイング/提案書のアウトライン作成の手順

それでは、AIを利用した提案書のアウトラインを作る時の段取りをみてみましょう。

2.1.AIを利用した提案書のアウトライン作成の手順

BtoBtoCの提案書のアウトラインを作ることを考えた時に必要なものは何でしょうか。

(1)ターゲットの明確化
提案書の対象となる企業や消費者層を明確にし、そのニーズや課題を把握することが重要です。

(2)提案の背景・目的
提案書が何を目的としているのか、その背景や現状を説明することが必要です。

(3)提案内容の詳細
提案内容を詳細に記載し、そのメリットや優位性を明確にすることが重要です。また、提案内容に対する具体的なアプローチやプラン、提供するサービスや製品の特徴などを記載することも大切です。

(4)提案の効果・成果
提案内容によって得られる効果や成果を明確にし、数値や具体例を用いて示すことが重要です。

(5)コスト・価格
提案内容に関連する費用や価格について、明確に記載することが必要です。また、コストメリットやROI(Return On Investment)の観点から、提案内容の価値を説明することも重要です。

(6)提案の優位性・競合優位性
マーケットにはコンペティターが存在します。提案内容の優位性や競合優位性を明確にし、競合他社との比較や差別化ポイントを説明することが必要です。

(7)スケジュール
提案内容の実施に必要なスケジュールやロードマップを示し、実現可能性を説明することが重要です。

(8)提案のまとめ
提案内容をまとめ、再度そのメリットや価値を強調することが必要です。

2.2.AIを利用した提案書のアウトライン作成に必要なデータの収集方法

AIを利用した提案書のアウトライン作成に必要なデータの収集方法には色々とあります。主なものをあげてみましょう。

(1)市場調査
提案内容に関連するマーケットリサーチを行い、競合情報やトレンドを収集することが必要です。具体的には、市場調査会社が提供するデータを活用する方法や、オンラインでアンケート調査を行う方法があります。

(2)内部データ分析
提案書を作成する企業の内部データを分析することも重要です。売上データや顧客情報など、企業が持つデータを分析することで、提案内容を具体的かつリアルなものにすることができます。

(3)外部データの収集
提案内容に関連する外部データを収集することも必要です。具体的には、SNSのデータや業界ニュースなど、インターネット上で入手できる情報を収集することができます。

(4)AIによる分析
AIを活用してデータを分析することで、提案内容の根拠や予測結果を示すことができます。具体的には、自然言語処理による分析や機械学習による分析などがあります。

3.AIを利用した営業DX・ロールプレイング/提案書のアウトライン作成での課題と対策

3.1.AIを利用する上での課題

AIは日々進化しています。ムーアの法則(集積回路あたりの部品数が2年ごとに2倍になる)の5倍から100倍以上のペースで進化していると言われています(元NVIDIAのエンジニアであるジェームス・ワン)。

そのために、例えばChatGPTに入力して返って来た答えは次の瞬間には変わっていると言うことです。ですから、定説にはならずに、変化しつつある一つの参考資料に過ぎないと言えます。

また、多くのAIは米国を中心とした英語圏での言語や習慣が元になっています。その自動翻訳をベースにしている日本語化されたAIでは、相当変な(違和感のある)日本語の表現や記述は避けられません。

3.2.AIを利用するための解決策

(1)データ品質の向上
AIが正確な予測を行うためには、高品質なデータが必要です。データ品質を向上するためには、正確なデータの収集とクレンジング、データのバイアス(偏見や偏り)を減らすことが必要です。また、AIを実装する前に、十分なデータ品質の確保が重要です。

(2)透明性の高いモデルの選択
透明性の高いモデルを選択することで、AIシステムの判断の根拠を解釈ができます。透明性が高いモデルには、決定木、ロジスティック回帰、SVM((Support Vector Machine:機械学習モデルの一種)などがあります。また、AIシステムの結果を解釈するためには、グラフィカルな解釈方法(可視化)を用いることが効果的です。

(3)バイアスの低減
バイアスを低減するためには、データの収集方法に注意することが重要です。また、特定の個人属性に関するデータの収集には、法的に要求される同意を得ることが必要です。また、AIシステムの設計やアルゴリズムの選択において、バイアスを減らすための技術的手法もあります。

(4)プライバシー保護の強化
AIが個人情報を取り扱う場合は、プライバシー保護を徹底する必要があります。適切なデータ保護法規制に従うこと、個人情報を匿名化すること、セキュリティ対策を実施することが必要です。また、個人情報の利用について明確な同意を得ることが法的に義務づけられています。

(5)誤った結果に対する対応策の策定
誤った結果に対する対応策を事前に策定することで、信頼性の高いAIシステムを構築できます。AIシステムの設計やアルゴリズムの選択において、エラーを検知するための手法を用いることも効果的です。また、AIシステムの監視体制を整え、適切な管理・運用を行うことが重要です。

4.AIを利用した営業DX・ロールプレイング/提案書のアウトラインに利用できるツール

最新のものでは「ChatGPT Plus」(GPT-4)があります。主なジャンルのツールでは(1)AIによる提案書自動生成ツール(2)自然言語処理による提案書の分析ツール(3)プレゼンテーション作成支援ツール、などがあります。

4.1.現時点で提案書のアウトライン作成に利用できるツールの紹介

現時点で利用できる代表的な提案書のアウトライン作成に役立つツールを紹介します。
AIを利用したアウトラン作成の支援ツールは、残念ながら日本語版のものは見当たらないようです。英語のものはいくつかありますが、その使い方をマスターするよりも、旧来のアウトライン作成ツールの方が使い勝手は良いと思います。

(1)テキストエディタ
PCでもスマホでも使える利便性があります。iPhoneやAndroidのデフォルトのメモツールで十分実用的です。アイデアが思いついた時や、気になることをメモしておくことはアウトライ作成に役立ちます。

(2)プレゼンテーション作成アプリケーション
PowerPointやKeynoteには、アウトライン作成ツールがついています。後にプレゼンテーション用のスライド作成にも使えますので大変便利です。

(3)アウトラインプロセッサー
テキストエディタの一種ですが、アイデアプロセッサーと呼ばれることもあります。
代表的なものは、Microsoft OneNote、マインドマップを作るときに使えるFreeMind、XMindなどがあります。
マインドマップは樹形図で考えを立体的にまとめられるので企画立案にも役立ちます。

4.2.実際にAIを活用してロールプレイング/アウトライン作成を行った事例

では、実際に世界的に注目を浴びているChatGptを使って、アウトラインを作ってみましょう。

ChatGPT(GPT-3.5)による実行結果の例
質問事項はなるべく具体的に「設定」「依頼内容」「条件」をつけてChatGPTに送ります。
何回か実行して妥当性のあるものをチョイスします。内容的には似ていますが表現や参考サイトはその都度ちがうことがあります。
以下は、“Send a message.”に入力した内容と、ChatGPTからの回答です。

*****(ここから)*****

#設定
あなたは、コンピュータメーカーの営業担当の部長です。営業DXを進めようとしています。
#依頼内容
販売店に提案書を作ろうとしています。
まずAIを利用して提案書のアウトラインを作ることを考えています。アウトライン作成の段取りを教えてください。
#条件
BtoBtoCモデルの想定で販売店の再販売先(C)は、薬品メーカー、カーディーラー、食品会社など10業種にわたっています。
回答の書式は箇条書きでアラビア数字の番号付きでお願いします。
日本語の参考サイトを末尾に紹介してください。日本語タイトルとURLも提示してください。英語のサイトは除いてください。

【ChatGptの回答】
アウトライン作成の段取りを以下に示します。

1.販売店と再販売先(C)との関係性を明確にする
1.1 再販売先(C)がどのような商品やサービスを提供しているのかを把握する
1.2 再販売先(C)のニーズを理解する
1.3 再販売先(C)が直面している課題や問題点を洗い出す
2.提案する商品やサービスの特徴や利点を整理する
2.1 提案する商品やサービスの概要を明確にする
2.2 提案する商品やサービスの特徴や利点を洗い出す
2.3 提案する商品やサービスが解決する課題や問題点を明確にする
3.提案の根拠を示す
3.1 提案する商品やサービスの市場規模や市場動向を調査し、根拠を示す
3.2 提案する商品やサービスの競合状況を調査し、優位性を示す
3.3 提案する商品やサービスに関する実績や事例を提示し、信頼性を示す
4.提案の具体的な内容を示す
4.1 提案する商品やサービスの価格や販売条件を提示する
4.2 提案する商品やサービスの導入方法や導入スケジュールを示す
4.3 提案する商品やサービスのアフターサービスについて説明する
5.最後にアピールポイントを明確にする
5.1 提案する商品やサービスの最大のメリットや強みを再度アピールする
5.2 その他提案のアピールポイントを示す


参考サイト:
『提案書の作り方・書き方まとめ|見積もりの出し方、プレゼン資料の作り方も解説』(ホクシン.com)
https://www.hokushin.com/knowhow/proposal/

*****(ここまで)*****

尚、上記のURLは全くあてにはなりません。ChatGPTからは次のような「お詫び」が返ってきました。
「申し訳ありませんが、私はアクセス先を直接確認することができません。もしアクセス先が外部のウェブサイトであれば、そのウェブサイトが正常に稼働しているかどうかを確認してください。」

次に、ChatGPTの作った提案書アウトラインを元にした、営業担当者向けのロールプレイングのシナリオを作ってみましょう。

*****(ここから)*****

#設定
あなたは、コンピュータメーカーの営業担当の部長です。営業DXを進めようとしています。
#依頼内容
上記の提案書のアウトラインをもとにした、ロールプレイングのシナリオを作ってください。
#条件
ロールプレイングを行う対象者は大卒新入社員で提案書でアプローチをするのははじめての営業担当者です。

【ChatGptの回答】
ロールプレイングのシナリオ例を以下に示します。

[シナリオ:薬品メーカー向けの提案書を作成する]

役割:営業担当者
相手:薬品メーカーの担当者
目的:提案書に基づいて、薬品メーカーの担当者に商品の提案をすること

1.挨拶と自己紹介
薬品メーカーの担当者に対し、自己紹介を行い、挨拶をする。
「はじめまして、私は○○と申します。今回、ご担当いただいている薬品メーカー様に、当社の商品について提案をしたく、お伺いした次第です。よろしくお願いします。」
2.提案書の内容の説明
提案書の構成や内容を説明する。
「この度、当社から薬品メーカー様に、商品の提案書をお送りさせていただきました。この提案書では、薬品メーカー様において抱えていらっしゃる課題やニーズに合わせた、当社の商品の提案を行っております。提案書は、以下のような構成になっております。」
3.商品の提案
薬品メーカーの担当者が抱える課題やニーズに対し、当社の商品の価値を説明する。
「こちらが、当社がご提供する商品です。この商品は、薬品メーカー様が抱える課題に対し、以下のような価値を提供することができます。」
商品の価値を、具体的な例や数字を用いて説明する。
4.価格やサポート体制の説明
商品に関する価格やサポート体制などを説明する。
「提案した商品の価格は、以下のようになっております。また、商品に関するサポート体制につきましても、以下のような内容をご用意しております。」
5.まとめとアクションプランの提示
提案内容のまとめを行い、アクションプランを提示する。
「以上が、当社からの提案になります。ご興味をお持ちいただけましたら、詳細な説明やデモをご提供いたしますので、お気軽にお問い合わせください。」
以上が、新入社員の営業担当者による、薬品メーカー向けの提案書に基づくロールプレイングのシナリオ例でした。以下に、ロールプレイングを行う際の注意点をまとめました。

  • 提案書の内容を十分に理解することが大切です。提案書に記載された商品の特長や提供する価値などを把握しておくことが必要です。
  • 相手のニーズに合わせた提案を行うことが重要です。相手が抱える課題やニーズに合わせ、当社の商品がどのように価値を提供できるかを説明しましょう。
  • 商品に関する知識を深めることが必要です。商品の特長や価値提供の仕組みなど、相手からの質問に答えられるように知識を身につけることが大切です。
  • コミュニケーションスキルを磨くことが重要です。相手の話をよく聞くこと、適切なタイミングで質問をすること、相手の反応を確認しながら話を進めることが必要です。

*****(ここまで)*****

まとめ

実際に話題のAI、ChatGPT(GPT-3.5)を利用した事例もみてみましたが、なかなかの完成度です。けれども、まだまだのような到達点も見受けられます。
営業の仕事は当面はAIにとって代わられることはなさそうです。ただし、強力な支援ツールとして活用できることは十分に理解できるかと思います。
企業でAIを利用し活用の幅を広げるには、様々な注意点や留意事項があります。
AIはあくまで「道具」の一つであって、過信したり使い方を間違えれば、使った本人に大きなしっぺ返しが来ます。そして、それは多くの人々に迷惑をかけてしまう場合があることも理解する必要があります。